人間は60兆個の細胞の中に、2つのエネルギー工場を持っています。
それは、解糖系とミトコンドリア系です。
解糖系は無酸素で糖質を原料に、細胞質で作られます。
ミトコンドリア系は有酸素で糖・脂肪・タンパク質を原料に、ミトコンドリアで作られます。
38億年前に誕生した原子生物は、酸素の無い環境下で生きている為、酸素の必要の無い解糖系のエネルギーシステムを使って生きるしかありませんでした。
その後、太陽のエネルギーを利用する光合成細菌が現れると、大気中の酸素濃度が上昇し、従来の嫌気性細菌は、生命の危機に陥りました。
そこに登場したのは、酸素を利用したエネルギーシステムである、ミトコンドリア系細菌です。
私たちの細胞は、もともと解糖系の単細胞生物にミトコンドリア系の細菌が寄生したのです。
好気性細菌が活動した場所は、部分的に無酸素状態になり、嫌気性細菌にとって、酸素を食べてくれる、好気性細菌に頼るしかありません。
また好気性細菌にとっては、解糖系によって生み出された栄養(乳酸)を分けてもらえます。お互いにメリットのある中、次第に一体化し進化を遂げました。
もともと独立した生物体であったミトコンドリアは、細胞内にありながら、独自のDNAをもっています。
ただそれは、自分達の分裂・複製のみに用いて、他の働きは、本体の核であるDNAに委ねています。
無酸素状態で活発になる解糖系は瞬発力、有酸素状態で活発になるミトコンドリア系は持久力と、それぞれ役割分担する事によって、生命活動が成り立っています。
20代の頃は解糖系が主力エネルギーとして働くので、無理が続いても乗り切れますが、
加齢していくほど解糖系は後退し、瞬発力が必要な無理が利かなくなります。
しかしその反対に、ミトコンドリアの数は、増えて行きます。
40代以降は徐々にミトコンドリア系のゆったりした生き方に切り替え、交感神経と副交感神経、解糖系とミトコンドリア系、これらの機能をバランス良く使いこなす事が大事です。
しかしながら現代人は、ストレスや食生活の欧米化、社会での成果(瞬発力)などの要因により、解糖系にかなり偏っています。
それによる体内の環境の悪化によって、細胞が酸素呼吸を減らし、発酵を増やして、生き残りをはかる過程で、ミトコンドリアが分裂・萎縮し、原核細胞時代へと逆行します。
その結果、癌遺伝子が活性化し、癌抑制遺伝子が働かず、細胞核のDNAにも異変が起こります。
ミトコンドリアの分裂・断片化によって、ますますエネルギー代謝が、酸素呼吸優位から無酸素発酵優位へと、逆転して行きます。
ストレス
ストレスが発生
↓
交感神経が刺激
↓
アドレナリン・ ノルアドレナリンが分泌
↓
血管が収縮し、血流が止まる
ストレスで低酸素・低体温状態になると、赤血球はくっつき、ドロドロ状態になります。
ドロドロは不健康と見なされてますが、興奮するだけで、血管の末端は赤血球がドロドロ状態になり、無酸素状態となります。
無酸素・低体温では酸性になり、血流はドロドロです。(交感神経優位)
有酸素・温かい状態では弱アルカリ性になり、血液はサラサラです。(副交感神経優位)
危機を乗り越える為、解糖系がフル活動し、体が低酸素・低体温状態になり、瞬発力に偏った体に適応しおうと体がバランスを取ります。
興奮や怒りで血液がドロドロになるのは、外敵との戦いの際、自分の体が傷つけられても、出血を防ぐ働きがあります。
当然瞬発力は長い時間持続出来ないので、その後の十分な休息が必要です。
ストレスが悪い、癌が悪い、解糖系が悪い、病気が悪い、ではなく、癌や病気になることによって、体はバランスを保とうとしています。生きにくい状況下に適応しおうとする、体の知恵です。
全てはバランス
日本人の病気になる人の7割はストレスを抱えすぎた交感神経緊張型で、
3割はストレスが少な過ぎた副交感神経への偏りです。
ストレスが少な過ぎても代謝の低下で、血流障害が起こります。
またのんびりし過ぎの生き方をすると、生活全般の能力低下が進み、日常生活そのものがストレスになります。
興奮と安らぎ、頑張りと休息は表裏一体であり、安らぎや休息だけを得ることは、出来ません。
ストレスと安らぎ、交感神経と副交感神経、血液ドロドロとサラサラ、解糖系とミトコンドリア系、全てはバランスです。